Angel's Trumpet 

 葉の色が赤や黄色に染まる頃、この通りは何かと慌ただしくなる。小さな花や植物たちは冬を迎える準備で大忙しで、時期を見誤ったのか単に気が早過ぎるのか、冬眠してしまったこぐまを引きずるおおぐまは見物である。店の商品を買う可能性が高いのもこの時期で、店の中でも大きいものを買って持っていくものは意外といた。

 ある日、そんな通りを大行列で過ぎていく団体がいた。団体客とは珍しい、と少し立ち上がってみるものの、店に入ってくれる訳ではない。ただ一人でも入れば嬉しいものだ。
 行列の中、借りてきた猫のように、黙って大人しくついていく一際小さな子どもがいた。彼は一瞬こちらを向いて、眼窩をきょろきょろと動かす。しかし商品には興味が沸かなかったらしい。そのまま通り過ぎていくのを、私はただじっとカウンターから眺めているだけだった。なんだ、買って行ってくれないのか、そう店の中から呼びかけると、いいものなかったと言われてしまった、少しどころか、かなり辛い。

 あんなに多く連れ立って歩いたら、大変そうだ。だって自分よりも体格が大きい者ばかりかもしれないし、その未熟さに縮こまってしまうかもしれない。やはり知らない世界は怖いな、なんて思って早めのシャッターをからからと降ろした。夕焼けの光がきついから、そんな言い訳をしながら。

エンゼルストランペット:花言葉は「遠くから私を思って」。


Oxypetalum 

 静けさが極まった、とある終秋のこと。小さなお店の周りでは落ち葉を寝床にする動物が増えてくる。その内の一匹と思しき狐の子が、迷い込むようにお店の中へと入ってきた。最初は、ただ狐色の毛玉が入ってきたのだと思い目を逸らしたが、揺れる尻尾と、くりくりと輝く瞳を発見してしまった以上どうしようもなく。結局そのまま招き入れ、その身体にもふもふと触らせてもらった。

 残念なことに、私は動物の言葉がわかるわけではなかった。いや、そもそも狐という個体種に対して、知識すらまともになかった。それ故に、彼が何故このお店の中へと入って来たのかは不明だ。不明だったから、迷い込んだのだろうと勝手に結論づけたのだ。
 落ち葉はすっかりと落ちきって枯れきり、まさに冬将軍に仕える先遣隊が走り出そうとする頃ということもあったのか。狐は店の中から動こうとはせず、ただ私の手に黙って撫でられ続けている。そんな居心地の良い店が作れたのだろうかと思うと、少し誇らしかった。もちろん、狐が本当に何を考えていたのかはわからないので、憶測に過ぎない話だ。

オキシペタルム:花言葉は「望郷」。

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